日本の物流がピンチ、トラック運転手不足とその実態

ブルーカラーの職業は、定収入という固定観念があるが、実際には高給取りが多く、「そんなに稼げるの?」とびっくりするかもしれない。

建設作業員で例えると、コンクリートの建物には欠かせない鉄筋屋の仕事は力仕事がメインで、頭を使わないと思われているが、実際には決められた設計図の中で、強度計算をし、鉄筋の曲がり具合を計算し、ヤードと言われる鉄筋加工所で加工した鉄筋を現場に持って行き、結束していく。

鉄筋屋

ブルーカラーの職人は計算が苦手と思われているが、ミリ単位で加工組立をする必要があり、実際バカでは出来ない仕事といえる。

建設作業員はたいてい高校を中退したちょっとやんちゃな人が従事する職業と思われがちだが、そういう人は一生下働きを余儀なくされ、この業界も基礎学力は必要で、それが高収入につながっている。

その中で、日本の物流を支えるトラック運転手はどうだろうか。大型免許を持っていれば大抵の人はなれる職業であり、数十年前は花型の職種と言ってよく、長距離運転至っては月に100万円を超える収入を得る人もいたが、現在では定収入の代名詞と言われている。

近年トラックドライバーの減少から、従事者が非常に少なくなっているが、不況下で就職難の日本で、なぜこの様な自体が起こっているのだろうか。

 

長距離トラックドライバーの無理な運行

大型トラックは高速道路において、最高速度を90km/h以下に定められており、これは増加傾向にあるトラックの事故抑制の為と言われているが、この規制が更に事故を招いている現実がある。

それまで100km/hで走行していたトラックが90km/h以下で走らなくてはいけないという事は、1時間あたり10km、5時間で50kmもの損失が生まれ、これを補うため、それまで休憩に使っていた時間を損失分を取り戻すためにそのまま走り続けるというドライバーが多くなった。

それが原因で、居眠り運転、注意不足からの事故が多発している。

長距離トラック休憩

運送会社は、休憩時間をきちんと取らないといけないという通達をし、ドライバーは強制的に休憩を取らざるを得なくなったのだが、速度は出すな、休憩は取れと無理難題を言っているのと同じことだろう。

 

運転するだけではないトラック運転手の仕事

一般的に、トラック運転手は運転だけをすれば良いと考えている方が多いが、実際には届け先に到着すると荷降ろしが待っている。

荷物を下ろすのはフォークリフトを使うと思われがちだが、それは荷台の両脇部分が開く、通称ウィング車だけで、後部開閉式の荷台の場合、自らの手でそれをしなくてはいけない。

トラック荷積み

長距離運転で疲れきった身体で、更に荷降ろしという重労働を一人でこなしているのだからその苛酷さが分かるだろう。

そして、荷物を下ろしたら、次の荷物を積むために更に荷積みが待っているのだから、睡眠時間など得られるはずもない。

 

ダンピングを要求する荷主

不況になれば必ず下請け業者に負担が集まるのは世の常だろう。

経費削減と簡単に言うが、それを実現するのは容易いことではない。しかし、「他の運送会社を使う」という伝家の宝刀を抜けば、運送料を格段に下げることは可能で、運送料は年々下がり続けている。

コスト削減と企業がお題目を唱えるが、実際の所こうした業者に負担を強いているだけという現実があり、その運送業者もコストを下げなくては経営が成り立たず、とどのつまりはドライバーの給与が削減される事となる。

過酷な労働であるにも関わらず、報酬も少ないというのが現在のトラック運転手の現実で、それが表立つことも非常に少ない。

 

トヨタ方式が運送業界をダメにした

トヨタは、改善というお題目を唱え、いかに効率を良くするかを考える企業で、近年その運営方法を真似する企業が増えてきた。

トヨタ方式の中で一番大きな経営方針が、「ノンストック生産」というものだ。

これは、トヨタの工場内に部品在庫を少なくさせ、必要な部品だけを調達するもので、在庫過多を防ぐ狙いがある。これは一見非常に理にかなっているのだが、在庫を必要最小限にするという事は、頻繁に下請け業者から運搬しなくてはいけない。

こうなれば、トラック業界が潤うと考える人も多いだろう。しかし、実際には24時間稼働しているトヨタの工場で、決められた時間に必ず納入しなくてはならず、不可能であればペナルティが課せられる。

1

必ず時間内に納入する為、運送会社は予定時間よりも早く到着しようとする。トヨタの工場の前にはそれらのトラックが長蛇の列を作り順番を待っている。

簡単にいえば、トヨタはトラックを倉庫代わりに使っているのだ。

 

長距離トラック運転手の厳しい懐事情

数十年前は、長距離トラックといえば高収入の代名詞であり、月給は平均して60万円以上はした。そう聞くとトラックドライバーも悪くないなと考えるかもしれないが、今はその様な収入は夢のまた夢、30万円を切るところが大半で、つらい仕事なのにも関わらず、定収入で、事故の危険と隣り合わせという過酷な職種といえる。

TKY201306200242

これが現在のトラックドライバー不足を招いているのだが、当然といえば当然で、誰が好き好んで危険で給料の安い過酷な仕事を選ぶのだろうか。

トラック運転手の占める年齢層は、30歳未満はわずか3・4%、40歳以上は78・2%となっており、若い世代はトラックドライバーを敬遠している。

どうせつらい仕事なら、他の職種を選んだほうが良いし、それでもドライバーになりたいのであれば、二種免許を取得し、バスの運転手になったほうがよほど高収入にありつけるだろう。

国は規制緩和によりトラック業界参入をしやすくしたのだが、これが運賃減少の原因とも言え、運賃が安くなって喜んでいるのは一部の大企業という訳だ。

運送業は国の血管といわれ、国家運営で陰ながら非常に重要なパーツだが、それをダメにし、今頃になって慌てて「ドライバー不足」などと言っている事に、先見の明が無い日本の短絡的な政策が見えてくる。

コラム

Posted by NEWS