日本が憧れるドイツ健全財政の嘘

日本人がヨーロッパで特に親近感を覚える国はドイツで、日本と同じく工業大国として知られ、日本と同じく第2次大戦での敗戦国というだけでなく、その真面目な気質が日本人に親近感を覚えさせる要因といえます。

とかく、日本はドイツを見習えとドイツを国家運営のモデルとして目標としてきましたが、かつてドイツ日本と同じく債務超過に陥り、国家運営がままならない状況まで陥ったのですが、経済改革を行い、債務ゼロ、EU最大の優良経済大国のひとつとなりました。

とかくドイツを見習ってきた日本は、この経済危機をドイツから見習って再建すれば良いのではないでしょうか、しかし実際にはドイツを満額で見習っても日本に未来は無いのです。

 

目指すものを間違っていたと理解したドイツ

1990年の東西ドイツを統一するためのコストで、一時深刻な経済危機に陥ります。そこで、シュレーダー率いる社会民主党政権は、大胆な改革に踏み切ったのですが、その成果が、今になって実を結んでいるとの評価を受けています。

ドイツ社会民主党

ドイツが選択した改革は、それまで目指してきた福祉国家としての国家運営を捨てたのです。

福祉国家といえば聞こえが良いのですが、簡単にいえば社会主義や、共産主義と似通った思想で、完璧なる理想主義と言えるでしょう。世界でこの様な国家体制が実現できていないのは、労働意欲が低下するためと言われています。

働かなくても金が入ってくるなら、多少収入が少なくとも政府から給付金を取ったほうが良いと考える人の方が多くなるのは必然で、この体制を維持できるのは人口が少なく、資源が豊富な北欧諸国だけです。

日本も福祉国家を目指しているのですが、1億の人口の国が、数百万の人口の国を見習っても無理があるのは必然で、ドイツはそれを早くから気づき、方向転換しました。

まずドイツがしたのは、失業手当などを削り、労働者になるべく働く意欲を持たせる一方、非正規雇用を拡大して、企業に労働者の雇用コストを下げるインセンティヴを付与した事です。

平たく言えば、「働かないのに金を欲しがるな」という事であり、企業優先の経済社会にしたという事ですね。

この結果、企業努力によって生産性も上がり、全体としてのドイツ経済の競争力が強化されたと言われているのですが、今日、日本が行っているものと同じと言えます。

 

マルクからユーロへ、美味しい思いをしたのはドイツのみ

ドイツは工業国家として、輸入よりも輸出に重きを置いているのは日本と同様ですが、なぜ日本の輸出産業がこれほど衰退したのか、それは円高による為替差益の減少が大きな原因と言われています。

どんなに輸出産業が好調だとしても、世界経済が不安定になれば、投資家はこぞって安定通貨の円を買いたがり、それによって輸出産業はダメージを受け、輸出しても利益が出ないというジレンマに陥ったのです。

ドイツマルク

では、ドイツはどうでしょうか。ドイツはドイツだけの単一通貨を捨て、ユーロを導入しました。ドイツの経済が良くなれば自然とドイツの通貨は安くなるのですが、ユーロを導入している国には、ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインという財政危機の国があるため、簡単にユーロ高にはならないのです。

つまり、これらの国の経済が悪いため、ドイツの輸出産業は利益を出せるのです。

 

無借金優良国家のからくり

ドイツは、2015年予算案に関し、新規国債の発行を旧西独時代も含め46年ぶりに停止し、無借金で歳出をまかなえる見通しになったと発表し、世界を、特に日本を驚愕させます。

1000兆円の債務のある日本はこれを見習いたいと思うのは必然ですが、そしてなぜそれがドイツにできて、日本にできないのかを悔しく思うでしょう。しかし、実際には日本もすぐにそれをしようと思えばできるのです。

世界一のGDPを誇るアメリカ、この国は債務が一切無いだろうか?アメリカの債務残高は公表されているだけで2000兆円で日本の2倍あり、アメリカのGDPの2倍もあります。

世界一の経済大国でも債務がこれだけあるのにもかかわらず、なぜドイツは債務をゼロにできたのでしょうか。単にドイツ経済が健全だからという理由ではなく、裏にはからくりが潜んでいるのです。

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良い例が東日本大震災において、東京電力が福島第一原発事故により賠償金や保障の支払い能力が無いため、日本政府がそれを肩代わりしたのですが、これは東京電力という巨大企業が簡単にいえば倒産してしまえば、日本国民の利益が損なわれるという判断から決定したことです。

では、ドイツはどうでしょうか。ドイツの自動車企業フォルクスワーゲンは、アメリカにおいてディーゼルエンジンの不正を行い、その倍賞と制裁金で総額147億ドル(約1.5兆円)を支払わなくてはならなくなりました。

いくらフォルクスワーゲンが巨大企業といえども、この金額は倒産と隣り合わせと考えても良く、これを守るため、ドイツ政府はドイツ銀行に1兆円の融資を指示しました。

このドイツ銀行とは日本銀行のような中央銀行ではなく、民間の銀行で、その銀行に債務を肩代わりさせたと考えて良く、これだけを見てもドイツは1兆円の特別予算を計上することは無いのですから無借金の理由がよく分かります。

日本も、東京電力の負債を肩代わりすること無く、全てメガバンクに押し付ければ特別予算を計上することもなく、負債が増えることもなかったのです。

 

ドイツ政府は借金は銀行の借金

ドイツのメガバンクは殆どが巨額債務や不良債権を抱え、どこも火だるま経営を続けており、ドイツ政府の指示でろくな審査もせず融資を決定しているのだから当然といえば当然です。

では、日本のメガバンクはどうでしょうか。東京三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、郵貯銀行の全てが黒字経営で、超優良企業です。

ドイツ銀行は1兆4000億ユーロの高リスク残高を抱えていて、16年と17年の利払い不能になるのではないかという不安をもたれており、もしそれが現実のものとなれば、ドイツ政府はこれらの銀行を国有化しなくてはならず、そうなればドイツの無債務という幻想が崩壊することになるでしょう。

ドイツ銀行

近年、ドイツの銀行は隠し債務が表面化しており、不良債権がボロボロと出てきて、これが今ドイツの最大の問題となっており、実際にはドイツ政府の発表している無債務国家という嘘が明らかになってきているのです。

それでも日本の朝日新聞の様に、ドイツは優良国家で、日本は債務過多の崩壊間近の国家という間違った情報を流すマスメディアが多いのは、新聞などは面白おかしく記事を書き、売れれば良いという商業主義に走っているのが原因でしょう。

 

ドイツ人のコンプレックスが大きな原因

日本人はドイツに対してあまり興味を持っていない人が多く、ドイツという国の成り立ち、世界の人のドイツに対する評価を知らず、過大評価しているのですが、世界的にドイツは今でも先の大戦でナチス・ドイツがしてきたことを引き合いに批判する人が多くいます。

それを払拭するため、移民政策を推し進め、原子力開発を否定しているのですが、これはドイツ人が過去の精算をする為と言え、非常に大きなコンプレックスとも言えます。

しかし、それでもドイツはEUの中でリーダーになれないのは、ヨーロッパ各国はナチス・ドイツの行為を忘れていないからであり、ドイツはあくまでも敗戦国だからなのです。

ドイツ嫌い

それを払拭するために躍起になってドイツがいかに素晴らしい国かをアピールするため、政治的にも経済的にも他のEU各国よりも抜きん出た存在にならないといけないというのは至極当然とも言えます。

日本はドイツに見習うべき点は非常に多く、どんなに嫌われていてもEUの中では一番イメージの良い国だ。そんな国だからこそ見習うべき点は見習い、真似をしない点は否定をする姿勢が重要です。

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