日本の農業は復活するか、海外に目を向ける生産者

2015年の農林水産物・食品の輸出額は7452億円と3年連続で過去最高を記録し、農業のありかた、そして生産者の意識改革も進んでいる。

安全で味の良い日本の農作物が海外で注目され、健康志向の外国人に特に人気が出てきているが、これは日本食レストランが海外に増え、日本の料理、そして日本の農作物が現地の人に受け入れられているという結果となって現れている。

国産にこだわった展示商談会「アグリフードEXPO東京2016」にも、輸出強化に強い意欲を示す農業者や食品加工業者が集まり、これまでよりも攻める農業を目指している農業従事者が多いことが鮮明となった。

特に、高級志向の強い中国や、東南アジアの富裕層に好評で、これまで彼らは日本旅行の合間に大量に購入したり、日本から取り寄せたりしていたのだが、この大きなニーズに応える形で海外進出を目指す生産農家や企業が増えている。

 

海外の農作物で一番大切なこと

日本で、果物や野菜を購入する時の単位はどうだろうか、ひとパックやひとつという単位で金額が決まっているが、海外では1kgあたり幾らというもので、少しだけ購入するという事がほぼ不可能なのだが、なぜその様な販売方法を取るのだろうか、それには大きな理由がある。

タイに目を向けると、タイで取れる果物は全て1kg単位の量り売りになっているが、これはその果物や農作物が非常に安いという理由からだ。

例えば、ランブータンという果物があるのだが、これは30バーツ(約100円)で売られている。

1kg100円程度の単価であるため、細かいロッドで売るのは金にならないからというのが量り売り販売の大きな理由だ。

国土の大きなタイでは、果物はいくらでも取れるのだが、お世辞にもタイの果物が美味しいとはいえない。

これは、日本の様に小さな国土では、収穫できる両が決まっているため、単価を上げる為に品種改良などクオリティーを高めているのだが、タイなどの国ではその様な事をするより、量を売った方が簡単という理由で、甘みの少ないイマイチな果物ばかり。

しかし、海外ではこの手法が一般的で、日本の様に品質を高める努力をしている国は殆ど無い。

 

リピーターを作る為に必要なこと

高い日本の果物でも、富裕層は購入してくれるのだが、定期的に買ってくれるリピーターを作らなくては意味が無い。

物珍しさで一度買ってみたという話は良くあるのだが、結局現地で買えるものとそれほどの差がないのであれば再度購入することは難しいだろう。

物価で言えば、タイは日本の1/3で、タイで販売するときも、日本と同程度の価格帯に設定するだろう。しかし、極端な話をすれば、日本の農作物がタイの農作物よりも3倍の美味しさや価値がなければ売れないという事であり、それ以下であればコストパフォーマンスに劣るものとなってしまう。

圧倒的な差を作らなくては海外で日本の農作物が継続的に売れるという事は不可能といえる。

 

マーケティングを最重要視しなくてはいけない

日本の農業従事者に販路の確保など難しいことで、ましてや海外での販売なれば、マーケティングは非常に重要になってくる。

一般的な家庭に野菜を売ろうとしても、定期購入は難しいだろう。日常的に口にするものよりも、特別な日などにちょっと高くても購入してみるかと思えるような物でなくては農業ビジネスは成り立たない。

定期的に購入する顧客と、プラスアルファの顧客を掴んでこそ生産農家の定期的な利益になる。

農業は生産調整が非常に難しく、量を増やしたり減らしたりと簡単には行かない。

固定客を安定的につかむかが重要となってくる。

 

商社と生産者の連携が重要

以前、島根県益田市に石見空港が開港した時、「フライト農業」などと言って、東京に農作物を送り、販売するというプロジェクトがあったのだが、すぐに頓挫してしまった。

はじめから無理があったのは、送るものがトマトや米等の単価が安く、東京近郊の農家も作っているものばかりで、飛行機で輸送する意味が全く無いものだった。

輸送費だけかかり、ブランド化もできなかった競争力のないものを物価が高いという理由だけで東京の市場に送っても意味が無いのはプロジェクト段階で分かっていそうなものだが、そこは経済観念の無い地方自治体の役人には分からなかったのかもしれない。

しかし、宮崎県は完熟マンゴーをブランド化し、高価格で東京の市場に送りビジネスとして大成功を収めたが、これは当時の東国原知事が東京をよく知っていたからと言え、超高価格でも勝負ができると踏んだ決断力とマーケティング能力、そしてアピール力といえる。

 

農業というものはブームで終わらせる訳にはいかない。ブームが去った後、それまでかけたコストを回収できるかが非常に重要で、ブーム後にも安定納入できるようにしなくてはならない。

日本だけで消費されてきた日本産農作物を海外に売るという着眼点は良いが、一過性で終われる様な商品ではないという事を肝に銘じなければ、生産者の負担だけが残ってしまう可能性もあるのだ。