Appleから学ぶ日本の家電業界復活の道標

2016年9月10日

 

不採用

この言葉は就活をしている人がドキッとする言葉でしょう。そして不採用の理由を聞き出すことも出来ないのですから、自分の何が悪かったのか知ることも出来ません。

中には、その製品に対して最高の経験と技術、そして知識を兼ね備えている人でも不採用になってしまうのです。

 

AppleのGenius Barを不採用になったAppleのエンジニア

2008年までAppleにエンジニアとして勤務していたJK・シェインバーグさんは、OSをIntel製CPUで動作できるようにした人物で、Intel Macの生みの親と言われています。

この技術で、Apple製品は高度な処理が可能になり、今日のアップル製品がさくさく動作するのは彼の開発能力のおかげといえるでしょう。

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シェインバーグさんは、Apple社に21年間務め、その開発に携わっており、経歴や経験は申し分ないのですが、その彼を不採用にした会社があります。

驚くべきことに、プロフェッショナルの彼を不採用にしたのは、Apple製品をサポートするジーニアスバーでした。

ジーニアスバー

2008年にAppleを早期退職したシェインバーグさんは現在54歳で、退職後しばらくはのんびりしていたようですが、次第に自分の経験とスキルがジーニアスバーで役に立つのではないかと思い、スタッフの募集に応募したそうです。

自信満々で挑んだ採用試験でまさかの不採用。これには当の本人も驚きを隠せませんでした。

彼は、他の応募者が全て20代の若者ばかりであり、年齢だけで判断されたと推測、年齢差別を受けたとしているのですが、本当にそうでしょうか。

 

アメリカ企業が考える修理とは

日本人は物への愛着が非常に強く、大切に扱う習慣がありますが、海外、特にアメリカでは家電製品などは使い捨てという認識が非常に強いものです。

一昔前であれば、ちょっと叩いてみれば直ったという事でも、最近の家電製品ではそうはいきません。

近年の家電製品はコンピュータ制御されている物が多く、故障の原因は大抵内蔵されているコンピュータで、修理には非常に時間とコストがかかります。

アメリカ企業のビジネスモデルは、初期不良は必ず数%あり、それを見込んで販売する。そして、その数%を見つける努力をするよりも、新品に交換したほうが人件費や部品交換よりもコストがかからないというもので、「交換修理」という名目を使っていますが、修理は一切しません。

 

Appleの対応は非常におそまつ

Appleに機器の不具合などで電話をした時、驚くことがあります。それは、フリーダイヤルを使っていないという事です。

「あなたの意見はAppleにとって非常に重要です。このままお待ち下さい。前に30人ほど待たれています。」

この様なアナウンスが流れるのですが、フリーダイヤルでも無いのに、何時間また無くては行けないのかと普通の人は電話を切るでしょう。

これがAppleの方針で、無料のアフターサービスは利益にならず、コストにしかならないという事であり、そういう顧客からの電話は出来ればかかってこない方が良いのです。

本当に壊れたアップル製品だとしたら、原因を追求するよりも、新品に交換したほうが効率も良く、コストもかからないのですから、アップル製品に精通している人など特に必要ないと言えるでしょう。

シェインバーグさんは、ジーニアスバーの採用試験で、年齢で差別されたと言っていますが、実際には、原因を追求する能力よりも、いかに客をさばくか、その能力の方が重要であり、専門知識など特に必要ないというのが本当の不採用理由でしょう。

 

オペレーターは専門知識など持っていない

日本で、電話でのサポートを受ける時、それが直接そのメーカーに繋がっていると思っているひとが多いのですが、実際には外部業者に繋がっています。

その電話サポート業者がメーカーに変わってサポートするのですが、電話で故障かどうかの判断は非常に難しく、対応するのはプロでも困難です。

彼らもサポートをしているのではなく、いかに電話をかけてくる顧客を早くさばくかが重要で、簡単な動作確認を電話越しでした後、難しいのであればすぐに交換修理を勧めてきます。

知らない方は、メーカーの専門部署に繋がって、プロの社員が対応してくれると考えているかもしれませんが、実際には請負のコールセンターで働くアルバイトが対応しているだけです。

 

交換修理の問題点

不良機器を修理するのと、新品に交換するのはどちらが顧客にとって良いことでしょうか。

新しい物に替るのであればそちらの方が良いと考える人が多いので、この交換修理というビジネスモデルが成立しているのですが、これには大きな問題も出てきます。

もし、その製品がプレゼントだったらどうでしょうか。

もし、その製品が思い出の品だったらどうでしょうか。

大切な人からのプレゼントを調子が悪いからと交換できるでしょうか。

特に日本人の様に物を大切にする国民性の人にとっては、この交換修理という手法を受け入れない人が多くいます。

新しい製品に交換できれば、顧客も納得するだろうという押し付けのサービスでしかないと言えるでしょう。

 

海外で日本の家電製品が衰退した理由

家電大国日本だったのは過去のことであり、今では中国や韓国企業の家電会社が大手を振っています。

東南アジアをみると、これらの企業がシェアを伸ばしているのですが、それは単に安いからという理由ではありません。

実際にタイの家電量販店をみると、日本製のTVよりもSamsungのテレビの方が高い価格で販売されています。

SamsungTV

これは、Samsungのブランドイメージが向上したのも理由のひとつですが、現地での修理サービスを充実させているという事も理由のひとつです。

これまで、日本製品が東南アジアで評価されていたのは、修理などのアフターサービスが充実していたからだったのですが、現在ではコスト面、製品の信頼度の向上で修理センターなどは縮小されています。

アメリカのビジネスモデルを取り入れたことで、日本の家電製品の信頼度が落ちたと言ってよいでしょう。

 

スティーブ・ジョブズから学ぶ家電業界の未来

新しい技術は行き詰まる時が必ず来ます。

飛び抜けた技術だと言われていても、実際には昔の製品の改善をしただけという物ばかりで、それは、どの業界でも同じです。

ハイブリッドカーや自動運転の車が最新技術の様に言われていますが、あくまで自動車のカスタマイズでしかありません。

Appleがスマートフォンを出した時に、革新的な技術と言われていたのですが、携帯電話とタッチパネルのPCを合わせただけに過ぎません。

新技術よりもマーケティング力が非常に重要と言えるのですが、それを一番良く分かっていたのがAppleのスティーブ・ジョブズでしょう。

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彼はAppleに復帰し、マーケティングを最重要視しました。

なぜMacが売れなくなったのか、それは性能を向上させようと、一般のユーザーは何が良いパソコンなのか判断できません。

誰かが良いと言っていたから良いと思っているだけであり、ユーザー数の絶対値が多いWindowsユーザーの言うこと聞いて購入するのは必然で、いくら革新的な技術を用いろうと、性能を向上させようと、一般ユーザーは何が良いのか理解できないのです。

そこで、ジョブズはユーザーの意識改革を始めました。

iMac

iMacを世に出し、「おしゃれ」という価値観をユーザーに植えつけ、これまで無骨だったアップル製品をおしゃれなパソコンとして定着させたのですが、これが大ヒット。

いわゆるライトユーザーには性能よりも見た目の方が重要という事が明確になりました。

iPhoneやiPadを出した時も、「シンプル」という言葉を全面に押し出しました。

「簡単」=「シンプル」=「クール」

この価値観の定着で、これまでキーボードが扱えない層も、コンピュータを買い始め、ユーザー層を広げることに成功しました。

日本でもかんたん携帯というネーミングで一時期販売されていましたが、購入するのは高齢者ばかりで、「簡単」=「ださい」という価値観しか定着せず、散々な販売数だったのは記憶に新しいでしょう。

簡単携帯

ジョブズのマーケティング戦略が秀逸なのは、90%以上のユーザーは何が良いコンピュータなのか分かっていない事、そしてそのユーザーは性能よりも外見の方が重要と考えている事を理解した事と言えるでしょう。

ためしに、アップル製品を使っているユーザーに、何が良くてアップル製品を購入したのか聞いてみてください。かっこいいとかそういう理由だけしか返ってこないはずです。

 

日本の家電業界が復活する可能性

日本の家電業界は、値段を上げるために無駄な性能競争を繰り返し、高価格で誰にも必要としていない機能を詰め込んでいたのですから、全くAppleとは逆の発想です。

Appleは特に技術力に優れた企業ではないのはアップル製品を見れば分かるでしょう。iPhoneが革新的と言われていたのですが、現在では中国企業まで簡単に作れてしまうもので、結局は部品をパッケージングしただけなのです。

しかし、マーケティング力を重要視している為、売れ続けているのであって、iPhone程度の製品であれば、日本企業が作れない理由はありません。

日本企業はまずアメリカの悪しき習慣である、コスト削減の再優先を止め、顧客が本当に欲しがっているサービスや製品づくりをし、ブランドイメージを向上させる必要があると言えます。

アメリカ企業の良い所は学び、悪いところは改善する。

それが日本企業の最も特異とする分野であることを再確認しなくてはいけないのです。