山口組分裂時の噂は一体何だったのか

 

2015年8月、日本最大の広域指定暴力団六代目山口組が内部分裂し、神戸山口組が新たに発足した。

分裂から1年、全国各地で抗争事件が勃発しており、組事務所へトラック等で突っ込んだり、拳銃や火炎瓶を使った事件や、トラブルからの傷害事件、更には敵対組織の幹部を銃撃し射殺する事件まで起こっている。

警察は両組織を特定抗争指定暴力団へ認定するために、幹部を逮捕し、全容解明を強めている。

しかし、この1年で忘れ去られている事がある。両山口組についての噂レベルではあるが信憑性が高いと言われていたことで、テレビではコメンテーターがまことしやかに語っていたことだ。

 

神戸山口組は持って半年

分裂後の勢力が六代目側の方が圧倒的だったことや、司忍六代目組長から盃を受けている直参が勝手に出ていっており、ヤクザの盃の倫理に相反するとして、全国のヤクザ組織から相手にされないという見解が多数だった。

そして、前回の山一抗争の記憶が残っているのか、徹底的に本家が神戸側を潰すのだろうという味方をする者が多いのも納得できる。

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しかし、山一抗争の様に暴力団対策法が整備されていなかった時代と現在では同様に比較することは難しく、同じような抗争自体が起きる可能性は非常に少ないと言わざるを得ず、実際に今回の分裂騒動では山一抗争と比較する程の抗争事件は起きていない。

このクーデターと言える離脱騒動は長く計画されていたと考えられ、山口組内で最大勢力の山健組が離脱するすることで合流する直参を多数引き連れることに成功、それが神戸山口組発足時に盤石の地盤を作ったとも言える。

しかし、暴対法が整備されておらず、抗争事件が頻発するのであれば難しかったのかもしれないが、暴対法をうまく利用し、計画されたのではないだろうか。

神戸側の計画的な離脱があったからこそ1年以上たった現在も神戸山口組は存在しているし、更に組織を大きくしている。

 

山口組総本部を名古屋に移転

分裂当初、司忍組長が神戸市にある山口組総本部を名古屋に移転する計画があるという噂が飛び交った。

六代目体制は、司忍組長・高山清司若頭の出身母体である弘道会がある名古屋に総本部を移すのは不自然ではないだろう。

山口組分裂は、言ってみれば名古屋の弘道会と、神戸の山健組の諍いと考えてよく、神戸対名古屋という図式ができるのだが、それを考えると山口組を名古屋に移し、山口組はあくまで弘道会が主導するという立場を明確にする為には意味がある。

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しかし、神戸側が離脱の主張は「山口組は神戸のヤクザだ」というもので、よそ者の名古屋の組織が大きな顔をしていることが許せなかったというのが大きい。

離脱した神戸山口組側は「山口組」を潰したいと考えているのではなく、名古屋が仕切っている山口組に反旗を翻したというのが大きな理由で、あくまで敵は弘道会と考えて良いだろう。

その弘道会側が山口組を支配していると明確にしてしまえば、田岡一雄三代目組長を始め、歴代の山口組組長を慕っている直参から反発を招くことは間違いなく、立場を悪くしてしまう事が考えらる。

総本部移転は百害あって一利無しというのは、司忍組長にとっても同じではないだろうか。

 

山口組の金庫番が密告をする

山口組離脱理由のひとつとして、直参が本部に支払う上納金である会費や雑貨購入の金額が高額で、弘道会に金を集めるシステムに反発したという報道が多くあった。

しかし、山健組が出身母体である渡辺芳則五代目組長時代の最後の会費と六代目体制の会費は同額であり、上納金額を批判するのであれば、渡辺芳則五代目組長も批判の対象となっておかしくない。

上納金の額に不満がたまり分裂したのではなく、上納金が弘道会に集まっていたというのが実際のところではないだろうか。

分裂当初、神戸山口組最高幹部に山口組の金庫番がおり、金の流れや脱税に関しての情報を当局に渡し、司忍組長を始め、山口組幹部が多く摘発されるといった報道があったが、一切そんなはなしは聞かない。

それは当然のことで、それを掴んでいる金庫番と言われている幹部も同様に摘発されてもおかしくないのだから自らの首を絞めるようなことはしないだろう。

むしろ、ヤクザ社会において密告(チンコロ)は非常に恥ずすべき行為で、それで山口組を壊滅できたとしても神戸側は極道社会で後ろ指を差されて生きてゆかねばならないのだから、完全なデマといえるだろう。

 

弘道会の十仁会、山健組のスワットという暗殺部隊

弘道会には「十仁会」という暗殺部隊があり、同様の組織「スワット」と呼ばれる組織が山健組にあると言われている。

宅見若頭射殺事件直後の頂上作戦で組員の拳銃所持の共謀共同正犯に問われた司忍弘道会会長・桑田兼吉山健組組長の公判において、

「十仁会は拳銃を携帯所持して対立組織を攻撃するとともに警護を担当する組織」

「スワットは拳銃を携帯所持する組長専属のボティーガードで、組長の警護に専従する組織」

と認定されている。

十仁会は対立組織を攻撃する要素が含まれているが、あくまで警護を受け持つ組織であり、暗殺することが大きな目的の組織ではない。

スワットは総本部の部屋住みのほかに、組長警護のために総本部に詰めている組員のことであり、暗殺部隊という言葉自体が間違っている。

言ってみれば、十仁会もスワットもマスコミが作り出した都市伝説と言って良いだろう。

 

東京代理戦争が勃発する

分裂後、山口組、神戸山口組両団体ともに積極的に他団体との外交活動を展開している。

9月5日の神戸山口組初会合に、住吉会総本部長を務める加藤英幸 幸平一家総長が出席し、抗争に他団体が参戦するという報道が紙面を飾った。

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しかし、この抗争に他団体の組織が参戦すれば自らの組織も組事務所使用制限命令を受ける特定抗争指定を受ける可能性もあり、メリットは何もない。

他団体との交流をすることによりヤクザ社会での正当性をアピールすることが目的といえる。

これは山一抗争時に四代目山口組が一和会の絶縁状を他団体に送付し、一和会はヤクザ社会で孤立した。

この教訓から両団体は他団体との外交に力を入れているとかんがえられる。

神戸山口組側はヤクザ社会において最重要と言える盃を反故にしたわけだから、この外交活動は非常に意味を持っており、重要度は非常に高い。

井上邦雄神戸山口組組長は義兄弟の縁のある者を中心に外交活動をし、神戸側の正当性をアピールしている。

 

情報の出どころは結局のところあまり取材をせず想像で無責任に書く夕刊紙や、自称事情通のコメンテーターがほとんどだが、山一抗争時にも新聞や雑誌の販売数が飛躍的に伸びた歴史を見ても、これらのマスコミは山口組分裂抗争を利用して販売増を目論んでいるのだろう。

神戸山口組系組員や山口組系組員と見られる人物がネット上で互いの組織を批判し、デマを流しており、分裂抗争は情報戦の様相を呈しており、新たな抗争の手法と見て良いだろう。