SAMSUNG特別損失3100億円 速度第一主義の悲劇

韓国SAMSUNGが最新型スマートフォン「Galaxy Note7」が度重なるバッテリーの発火事故により、生産、販売中止を決めたことについて、全世界で販売された180万台の製品の別機種への交換や払い戻しの手続きといった直接的な損失だけで少なくとも約3100億円の特別損失が出ると見られている。

SAMSUNGのビジネスモデルは、新製品を次々に繰り出す「速度第一主義」で、スマートフォン市場を席巻したが、それがもろ刃の剣となっている。

リコールを通じて交換した製品からも発煙事故が報告され、開発能力、製品安全性が疑われる事態となっている。

 

速度第一主義というビジネスモデル

SAMSUNGの様な製品開発能力がそれほど高くない企業の特徴の一つとして、先を行く企業が発売した、もしくは発表段階のものを模倣し、先に製品化するという販売手法をよく取る。

例えば、何度もAppleにデザインからテクノロジーまで数々の訴訟を起こされているSAMSUNGは、製品の販売差し止め判決をうているが、それほど企業としてのダメージはなかった。

これは、訴訟から判決までの間に、模倣品を売り抜けてしまえば、判決が出たときには別製品が主力になっているという事で、ダメージが少ないというのだ。

確かに、6ヶ月おきに新製品が登場するスマートフォン市場において、販売差し止めはそれほど大きな不利益とは言えないだろう。

これ以外にも、買い替えサイクルが早いと言われるスマートフォン市場を見れば、早めに新製品を出すというのは、SAMSUNGだけがしていることではなく、AppleもSONYも同様だ。

しかし、SAMSUNGはその様なライバル企業よりも先に同程度の機能の商品を出さなければならないのが今回の事件を招いたといえる。

 

スピードこそ命、この思想が自らの首を絞めた

前述したとおり、SAMSUNGはどこよりも早く新商品を発表しなくてはならないのだが、スピードを重視すれば、必ず製品の安全性の検証期間は短くなる。

これまでのノウハウをそのまま転用すれば必ず間違いない製品ができあがるというものではなく、あらゆる状況下での検証作業は必ず必要で、時間はかかるが、これを確実にしていなければ、大きなリコールが起こった時の損失リスクを考えるとやらざるを得ない。

しかし、SAMSUNGは損失リスクよりもライバル企業よりも早く商品を出荷するという企業理念があるため、そちらを優先させたのだ。

言ってみれば、起こる可能性が低いのだからとリスクを重要視しなかったと言え、ギャンブルに近いビジネスを展開していたといえる。

 

SAMSUNGというイメージが地に落ちるのは確実

これまで、SAMSUNGは「日本企業」という勘違いから安全性と高機能をイメージされていた。

虎の威を借る狐だったSAMSUNGが、やっと独り立ちし、韓国の一企業として世界的ブランドになったことは非常に高く評価されるべきだが、企業信用度としては、まだそれほど高いものではない。

トヨタやSONYが不良品を出しても、リコールをしても、未だに海外の人がこれらの日本企業を信頼し、再度購入するのは、これまで培った信用があるからだ。

SAMSUNGという企業がこの様な信用を持っているだろうか。

まず「安いから」というところから出発し、SAMSUNGというブランドがそれほど悪くないという品質を作れるようになり、そしてやっとブランドとして認知され始めたばかりの段階という事を忘れてはならない。

言ってみれば、70年台の日本製品と同様で、品質は良くなっているが、今までの安かろう悪かろうというイメージが拭えないという人は大多数いはずだ。

日本人がSAMSUNG製品を買わない理由は、韓国製品の低品質というイメージが拭えないからで、それを払拭するのはあと30年以上かかるのではないだろうか。

その30年間の間に何もなければその可能性もあっただろうが、今回の事件でまたさらに30年伸びたとも言える。

 

SAMSUNGが入り込める市場が無くなってきている

SAMSUNGはこれまで、新興国に向けて低価格な商品を出荷してきたが、近年では中国企業のスマートフォンが主流で、そのマーケットでは太刀打ちできない状況になっている。

そこで、ターゲットを高級機に持っていっているのだが、やはり技術的にはトップではないため、どうせ高いならiPhoneを買うと考えるのが普通であり、シェアを徐々に減らし始めている状況だ。

そこに、この発火事故が頻発した世界的リコールでSAMSUNG製品の信頼度が低くなっている。

これは他のSAMSUNGブランドのスマートフォンだけでなく、テレビや白物家電も同様と言って良い。

一つの失敗が企業全体の損失に結びつくのは必然と言えるだろう。

所詮は現在の中国企業の様に、安い商品を売り抜けて利益を出したら撤退という手法だけしか使えないのだが、企業規模が大きくなるに連れ、研究費、訴訟費、運営費というこれまで考えなくても良かったものが負担になったと言える。

企業が巨大化した時、形態を変える必要性が必ず生じるが、それが出来なかった企業は遅かれ早かれ衰退する他無いのではないだろうか。

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