スポーツ

3000安打を目指すイチローとマーリンズという環境

投稿日:2016年7月27日 更新日:

日米通算の参考記録ではあるが、ピート・ローズの持つ通算4256安打のメジャー記録を超えたイチローは今季非常に好調で、アメリカメディアはこぞって、「とても42歳とは思えない」と賞賛しています。

2016年シーズンは現在.335(7月25日)と高アベレージを残しており、年齢的に野球人生の終焉期を迎える年齢の選手とは思えない活躍をみせている。

イチロー盗塁

これだけの記録を残している選手であれば、チーム監督であればイチローを使いたがるはずだが、実際には4番手の外野手としてベンチスタートが多く、出場機会に恵まれていないのが現状だ。

もし、フル出場をしていれば、3000本安打は既に達成しているはずだが、なぜこの様な素晴らしい選手をマーリンズは使わないのだろうか?

 

マーリンズのチーム事情

2002年からマーリンズのオーナーとなったジェフリー・ローリア氏は、「球界最悪の男」「球界で最も信用できない男」といった悪評だらけの人物として有名だ。

なぜここまで嫌われているのか、その理由はスター選手を大型長期契約で次々と獲得し大補強を行ったにもかかわらず地区最下位となった2012年のオフ、高額年俸選手をすべてトレードで放出する「一斉処分セール」を行ったからだ。

しかも球団はほとんど税金によって新球場を建設し2012年にオープンしていたため、納税者であるマイアミ住民とファンが怒り、裏切り行為だと同オーナーに球団を手放すように要求するボイコット運動まで巻き起こり、2013年の観客動員がメジャー30球団中29位とファンにも見放された球団と言って良い。

ジェフリー・ローリア

これに危機感を抱いたローリア・オーナーはイメージ回復の為に、長期的にスター選手を囲い強いチームを作るという球団のポジティブな意思をアピールし、本塁打王ジアンカルロ・スタントンと11月に13年3億2500万ドルというメジャー史上最大の契約を結び、その意志を見せる。このときローリア・オーナーは、ヤンキースの様な強いチームを作りたいと豪語している。

 

イチローを獲得した理由

メジャーリーグは商業的なマーケティングは日本のNPBよりも強く、金銭でのトレードやFAでの選手獲得は一般的で、終身を一つのチームにいるという事は稀だ。

イチローというブランドは、実際に見ることのできるレジェンドプレイヤーであり、薬物使用疑惑、ゴシップのネタ等も一切ない非常に価値のある選手といえるだろう。

しかも、そんな価値のある選手が1年200万ドル(約2億4000万円)、17年の契約選択権付という格安の条件で手に入れられるのであれば非常にお買い得といえる。

 

それでもイチローをスタメンから外す理由

マーリンズにはイチロー以外に3人のレギュラー選手がいる。

クリスチャンイエリッチ
クリスチャン・イエリッチ(24)
ジャンカルロ・スタントン
ジャンカルロ・スタントン(26)
マーセルオズナ
マーセル・オズナ(25)

将来を嘱望されているこの3選手はイチローと比べると、実績も守備力も劣るのだが、彼らはイチローには持っていない「若さ」という価値がある。

前述したとおり、MLBはビジネス的要素が非常に強く、これらの選手を育て、高額の金銭トレードで他チームに売り込みたいという球団の考えは容易に想像がつく。

数年以内には終わる選手と、将来的に高値で売ることができる選手のどちらに実績を積ませたいだろうか。それがイチローの出場機会が少ない理由と見て良い。

 

3000本安打達成は遅ければ遅いほど良い

マーリンズの昨季の観客動員数173万2283人はナ・リーグワースト。今季は3位(7月27日現在)という成績と、イチローの4256安打達成、3000安打挑戦というイベントのおかげで動員数は増えている。

日本でも同様にイチローの活躍が非常に注目され、連日ニュースで報道されているのだが、3000安打を達成したらどうだろうか、おそらくそれまで応援していたファンも一様の達成感から興味が少なくなるのは目に見えている。

これはアメリカでも同様で、観客動員数の伸びが減るのは必然と言え、それならば記録達成は遅いほうが商業的にマーリンズにとっては有利と言える。

マーリンズ側は記録達成をシーズン開幕当初は2シーズンかけて達成と目論んでいたのではないだろうか。そのペースで計算すれば複数年契約を結んだことも納得がいく。

 

イチローにとってマーリンズは最適だったのか

この様な起用方法をされて、当のイチロー本人は喜んでいるのだろうか。

野球選手である以上チャンスを手に入れたいと考えるのは当然の事だが、イチローにとってマーリンズは非常にマッチした環境と考えられる。

2012年、シアトルマリナーズを「若い選手にチャンスを与えるため」という理由でニューヨーク・ヤンキースに自ら離れたが、実際にはイチローはチーム内で浮いた存在として厄介者扱いをされていた。

イチローはプロでやる以上、自分の仕事をまず果たさなくてはならない。

という持論を持っている。これは、彼のオリックス時代の恩師である仰木監督の影響が強い。

仰木監督とイチロー

ある負けた試合後、イチローがうなだれていると、それを見た監督が、「お前は今日ヒットを打っただろ?胸を張っていろ、チームを勝たせるのは俺の仕事だ。」と若きイチローに言った。

選手はプロとして戦力になり、それを勝利に導くのは監督の仕事と理解したのだ。

しかし、シアトルマリナーズの選手たちは、イチローの考えを「自分勝手」と決め付け距離を置くようになった。

一般の会社でもこういう人はいる。協調性や言い方ばかりにベクトルを置いているが、実際には自分の脳力の低さを隠す為にこれらの言葉を使う人だ。

マリナーズの選手達は負け癖が付き過ぎ、この様な思考になっていったのだろう。

ニューヨーク・ヤンキースに移籍してからのイチローの活躍は御存知の通り、常勝軍団は自分のすべき仕事がどういうものか知っており、それがイチローにはマッチした様に見える。

現在のマーリンズはどうかといえば、若い選手はイチローを非常に尊敬しており、彼に教えを乞い、供に野球を楽しんでいる。

マーリンズに来たことをイチローはこの様に話している。

「アメリカに来て、途中チームメート、同じ仲間であってもしんどかったことはたくさんあったんですね。で、去年このチームに来て、1年一緒にやって、今年メンバーが少し変わったんですけど、チームメートとしては最高のチームメートとハッキリ言える、まぁ“子”たちですよね、もう、年齢差から言えば。本当に感謝してます。彼らには」

イチロー

我々日本のファンは、現在の起用方法を疑問に思うかもしれない。当の本人も納得していないのかもしれない。

しかし、最高の環境で野球を楽しんでいるイチローの姿は記録を達成するのと同じ様に価値のあるものだろう。

-スポーツ

Copyright© ニュース解説プラス , 2018 All Rights Reserved Powered by STINGER.