【パスポート返納命令】杉本祐一さんの請求を棄却

シリアへの渡航を理由にパスポートに返納命令を出されたとし、報道の自由を侵害されたとして、国に命令取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が6日、東京高裁で開かれ、深見敏正裁判長は杉本氏側の控訴を棄却した。

「外務大臣の判断に裁量権の乱用は認められない」と述べ、請求を退けた一審東京地裁判決を支持した。

 

パスポート返納命令までの経緯

2015年2月、シリアでの取材を計画していた杉本氏に外務省が旅券法19条1項を元にパスポートの返納命令を出した。

旅券法19条1項とは、「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」パスポートの返納命令を出せるというもの。

しかし、杉本氏側は、彼のパスポートの強制返納は、事実誤認であり、裁量権の濫用であり、行政法上、違法なものとしている。

 

シリアに行く理由とは

イスラム国がジャーナリストの湯川遥菜さんと、後藤健二さんを殺害したこの時期、シリアでの現地取材の意向が報じられた地元紙の記事を見た外務省関係者から、渡航自粛を求められた。

しかし、杉本氏はこれを拒否したため、外務省関係者からパスポートを押収される事態とたなった。

日本外国特派員協会で記者会見を行った杉本氏は、渡航や言論の自由の侵害と訴えた。

 

他のジャーナリストも首を傾げる

海外でフリーカメラマンとして活躍するジャーナリストは、「もし彼が本当に戦場カメラマンなら、外務省から自粛を求められ、旅券返納命令が出る可能性もあるなかで、シリア行きを事前にマスコミに流したりしない。旅券法の規定を知らなかったとすれば、本当のジャーナリストではない」とジャーナリストとしての資質を疑問視する人も多くいる。

中でも、元フジテレビのフリーアナウンサー長谷川豊氏がネット上で「すでにネットでも多く言われている通り、この男性のした行為は…ただの売名行為であることが分かってきています」と発言される始末だ。

 

旅券法を熟知していた可能性

もし、杉本氏が本当のジャーナリストだとすれば、旅券法の規定は知っていて当然というのだが、それでもマスコミに登場し、シリア行きを宣言したのは長谷川氏の言うとおり売名行為とも取れるが、本当の目的は他にあったのではないだろうか。

事前にマスコミにリークすることで、外務省が動き、旅券返納命令が出れば、それを材料に「自由と人権」を侵害していると大手を振って言えるだろう。

実際、彼は世間から大いに注目されることとなり、その目的は達成されたかに見える。

 

杉本氏のジャーナリストとしての活動

彼の名誉のために、彼がこれまで行ってきたジャーナリストとしての活動を調べてみた。

1994年、ボスニア内戦写真取材
1995年、ロシア取材
1996年、ボスニア取材、アフガニスタン内戦写真取材
1998年、パレスチナ写真取材
2000年、キプロス写真取材
2001年、パレスチナ取材、2月エチオピア・オガデン地方取材
2003年、イラク戦争取材
2004年、イラク戦争取材、北朝鮮取材
2005年、イラク戦争取材 ドキュメント映画 「綾へ」制作
2008年、イラン取材
2012-2013年:シリア取材

ネット上で言われている民宿経営をしているだけの素人というのは、この活動を見れば正しくないのは解るが、実際に活動した成果が見つからないのは、それほど成果はなかったのかもしれない。

 

2012年まで営業していた民宿「風々」

 

ジャーナリストとしての資質

杉本氏の活動を見ていると、多少左翼思想があるのかもしれないが、これについてはジャーナリストたるもの、多少の反体制思想があっても良いと考える。

反対意見は民主主義に必ず必要であるし、多くの議論を作ることが出来るだろう。両翼あって初めて鳥は空を飛べる。

しかし、自分の主義主張を他国の不幸に乗せるがジャーナリズムというのであれば間違っているのかもしれない。

ありのままの現地の状況を、ありのままファインダーで捉え、対岸から無関係だと考える人に対して伝えるのが戦場カメラマンの使命だろう。

シリアに入る前の後藤健二さんは、「何が起こっても責任は自分にあります」「危険だと思ったらすぐに引き返します」と宣言している。

誰に頼まれたわけでもない、自分の使命だと考え当地に行っているのだから、本当のジャーナリストと言えないだろうか。

彼はISに拘束され、ニュースになる前には日本の誰も彼を知らなかった。

拘束された後、遺書とも言えるビデオメッセージが公開されている。

そして殺害されてしまった。

彼のような気概が杉本氏にあるのだろうか?疑問でならない。

 

自己責任論と自由報道

2004年4月に高遠菜穂子、今井紀明、郡山総一郎の3名が誘拐され、自衛隊の撤退などを求められたイラク日本人人質事件では、自己責任論が論点となり、日本ではそれ以降、危険地帯へ足を踏み入れた人に対して使われるようになった。

確かに、物見遊山で危険地帯へ行くような人に対して、自己責任論が使われても良いのだが、報道のあり方に対しては疑問を持たざるをえない。

シリアやイラクなど危険地帯とされている地域に行くジャーナリストは、間違いなく大手マスコミに所属していないフリーランスか嘱託社員であり、危険地域へ入ることをバックアップしている風潮がある。

問題が起きた時は、当社とは関係ないフリーランスだとして自己責任を押し付ける。

この様な構造がマスコミにないだろうか。

自由に報道する権利は守られなくてはいけないが、それを足切りしやすいフリージャーナリストに丸投げしてはいないだろうか。

社会には知りたいニュースもあれば、知っておかなくてはいけないニュースもあり、後者を彼らフリージャーナリスト達が命を懸けて伝えている現実がある。

杉本氏が満額でその条件を満たし、他のジャーナリストと同レベルだと誰も思えないだろう。